甘い物パーティ 後編


ケーキにクッキー、チョコ菓子や、お饅頭や羊羹など様々。
大きなテーブルの上にはたくさんのデザートが並べられている。
キルアは思わずその光景に目を奪われた。
「まだあるぞ。」
クラピカがキルアが来るのを見計らって声をかけた。
その手に持つお盆の上にはプリンとゼリー。
パフェもあるそうだ。
甘い物好きの人間にとってはまさに夢のような光景!
「すっげー!これ俺のために!?」
きらきらと目を輝かせたキルアは普段よりもずっと無邪気に感じた。

キルアはしばらくきらきらした目のまま、
テーブルの上のデザートに見惚れていた。
しかし、いつまでも見ているだけでは仕方がない。
ふと、焦点を変えると、キルアの視界の端に横たわっている人間が見えた。
「あれ?…?」
クラピカがそれを見てキルアに声をかけた。
「あぁ。は一番がんばっていたからな。」
「なんてったって企画立案、内容も進んで考えていたもんな。」
レオリオが口を挟んだ。
「キルアの大好きなものをたくさん!って。」
ゴンが弾んだ声で言った。
キルアに笑みを向ける3人。

『(手作り)甘い物パーティ』

「みんな…。」
キルアは胸に何かがじんと染み渡るのを感じた。
少しうつむいて、照れくさそうな笑顔でつぶやく。
「ありがとな…。」

眠るの横にキルアは腰を下ろした。
そしての前髪から指を差し入れてくしゃっとなでた。
―――優しい笑みをたたえて。


のまぶたが開いた。
しかしまだ頭はそれほど働いてはいない。
はそのまま身動き一つせずにぼんやりと正面を眺めた。
とりあえず、ただ目を閉じないようにだけしていた。
時がたつごとに徐々に意識がはっきりしていく。
それとともににぎやかな音と声が意識的に感じ取れた。
がはっきりと覚醒したのはキルアがに顔を向けたとき。
パーティはすでに始まっていた。

「キルア…。」
「よっ。」
軽く笑みを浮かべた表情のキルア。
は自分が眠っていた間に、パーティーがすっかり始まっていたことに
軽く混乱した。
思考が定まらず、ふらふらとさまよう。
しかもそのとき、間の抜けた音が鳴り響いた。

おなかの音。

身体は微動だにしていなかった。
けれど、その中身は正直。
は思わぬ展開にがくっと地に伏してしまった。
レオリオが後ろで笑いを押し殺していた。

キルアは微笑んでいた。
それは、嘲笑でもからかいを含んだ笑みでもなく、ただただ優しい笑み。
キルアはその表情のまま、テーブルの方を向くと、
テーブルの上にあったケーキを一切れつかんだ。
は地に伏したままその様子を見ていた。
キルアは自分を見つめるの顔にケーキを寄せた。
反射的にの口が動く。
は口をケーキの端が入るくらいに開けて、ケーキを一口かじった。
甘さと共に顔がほころぶ。

口を開けたときに、キルアがわずかにケーキを押し込んだせいか、
の口の周りに生クリームが付いた。
キルアの手に残ったケーキはが口を動かしている間に、
キルアの口の中にあっさりと収められてしまった。
キルアの手にも生クリームは付いたまま。
その指をぺろりとなめる。
それからキルアは、まだ生クリームが付いたままの
の口元へ手を伸ばした、はずだった。

「勝手に甘い雰囲気出してんじゃないわさ!」

キルアに突如降ってきた手刀。
それにより痛快な音が響いた。

夢を見ているようなおぼろげな霧がいっせいに取り払われた。

「っ!」
キルアが頭を押さえながら後ろを向くと、
そこには腰に手を当て堂々と立つ少女(?)の姿。
ビスケット=クルーガー(57才)。
「何でお前がいんだよ!」
から連絡があったから来てあげたんじゃない!ていうか、
せっかく来たのにあんたら知ってる人間が一人も出迎えに来ないってのは
どういうことだわさ!(でもそのおかげで金髪の美少年が出迎えてくれたけど。)」
「知るかよ!(邪魔しやがって!)」
怒鳴りあうキルアとビスケ。
他の人たちはその様子に目を丸くしていた。

「おい、ゴン。あの女の子は誰だ?顔はかわいいがずいぶんと活発だな…。」
「ビスケのこと?グリードアイランドで会った俺たちの念の師匠だよ。
ああ見えても57才…。」
ボカッ!
瞬時にゴンにビスケの拳が飛んだ。
「女の年を堂々と言いふらすもんじゃないわさ!」
「うぅ…。」
(57才!?ごじゅうなな!?)
外見からは想像も付かないビスケの実年齢に驚きを隠せないレオリオ。
一方、クラピカはそれとは別のことを考えていた。
「確かにすばらしい身のこなしだ…。」

ふと、笑い声が小鳥のさえずりのように流れた。
の声だ。
その軽やかな声が皆に心地よく浸透していく。
その場の雰囲気が、不思議となごんだ。
「ふぅ…。まぁ、いいわ。一応キルアの誕生日を祝いに来たんだしね。
パーティを再開しましょうよ。」
ビスケが優しい笑みを浮かべて言った。
「あぁ。」
その言葉を機にパーティは再開される。

キルアがの方を向く。
「食おーぜ。お前と食べる分は一応残しておいたし、な。」
「うん!」
満ち満ちた表情で二人はテーブルに向き合った。

Happy Birthday Dear Killua!!


+おわり+



あとがき

ビスケ登場!最初はビスケの登場は予定していなかったのですが、
前後編に分けるにしては話が少し少ないと思ったので、ビスケを登場させました。
何かビスケに喰われているという気がしないわけでもないですが。


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