甘い物パーティ 前編


7月初め、ゴン・クラピカ・レオリオ・の4人は
あるひとつのことについて、話し合っていた。
「やっぱりさ…」
「じゃあ、こういうのは…」
口々に話す仲間達。
そんな人達が集まった誘い文句はごく簡潔な言葉。

「もうすぐキルアの誕生日」

7月7日。
朝からゴンはキルアを誘って外に出かけた。
これも話し合いの結果の一つ。
「ゴンはキルアと外に出かけてー…ね。」
「その間に私達が中で作業をするんだな。」
「外はお前に任せる。中は俺たちに任せとけ!な。」
「うん!みんな、がんばろうね!」
軽快な足音が遠ざかる。
3人はゴンとキルアが出かけるのを見届けた後、
ゆったりとした表情を引き締めた。
「じゃあ、やりますか!」
「おぅ!」
向かうは台所、出すのは大量の調理器具と食材。
3人はそれぞれ担当にあたる食材を手に取ると、そのまま歩み進んだ。

外―ゴンとキルア―
歩きながら二人は話した。
「ねぇねぇキルア、どこ行こうか?」
「お前、誘った割に目的地決めてねぇのか?」
ゴンは肯定の意を示し、はにかんだ。
「しょうがねぇなぁ…。」
キルアは少し考える仕草をした後、斜め上に視線を向けた。
「あ。」
ゴンの方を振り向いて、弾んだ声で話した。
「デパートいかねぇ?」
「デパート?」
「あぁ、ちょうど今、物産展やってんだよな。
チラシに載ってたチョコがさ、うまそうで…。」
「あ!あ…。」
ゴンはキルアの言葉に、思わず素っ頓狂な声をあげた。
それはまずい。
『物産展→おいしいものがたくさん→(食べ物つながりで)パーティ台無し』
そんな図式が頭の中に浮かび上がった。
「キ、キルア!俺、今日は食べ物より思いっきり運動したいな!」
あわてて話すゴンにキルアは一瞬疑問を抱いたが、
すぐに問い詰めることでもないだろうと思い、結局はさっと流した。
「そうか?なら…最近出来たアスレチックパークなんてどうだ?」
「そこにしようよ!うん!」
二人は再び、前を向き直した。

様々な音が鳴り渡る。
調理によるそれはまるで楽団のようににぎやかだ。
「んー、こんなもんかな。」
「あっちぃ…。」
「……………。」
ある者は生地を混ぜ、ある者はコンロに火をかけ、
ある者は何かをゆでている。
3人はそれぞれの作業を精一杯こなしていた。

そんなこんなで時は過ぎる。
そして達の作業はより根を詰めるようになる。
途中、ヒソカが来た。
「やぁv今日はキルアの誕生日…」
「ちょうど良いところに!サンドイッチ買って来て!」
ヒソカの言葉を断ち切って、が叫んだ。
「なんで」
「サンドイッチはサンドイッチ伯爵が
何か夢中なときにでも食べられるように、作られたものなの!」
「…ふぅんv」
ヒソカは3人の忙しさを見てか、とりあえずは納得したようだった。

「あのてっぺんまで競争しようぜ!」
「うん!」
「負けたらジュースおごりな♪」
外を駆け回る2人は、まるで懐かしい風景を演出しているかのように、
純粋な楽しさをみせる。
一方、他の3人は中で作業にてんてこ舞い。
「これ、テーブルに運んで良いんだな!」
「内装は…と。ん、これ型抜いてそのまま…。」
「焼いといて!私、これ仕上げなきゃなんないの!」
にぎやかな台所の外、空はいつの間にか紅く染まっていた。
「後はキルアが帰って来次第、冷菓をだして…」
「ボードは立てかけておいたぜ。」
「飲み物も用意できたぞ。」
ふと、にぎやかな音がぴたりと静まった。
3人はひとつ、深呼吸をした。

『よし!完了!』

紅く染まった空の下、少年二人が歩く。
「今日は一日中駆け回ったなぁ。」
「うん、楽しかったね〜。」
「ていうか、こんだけ動くと腹減るよな〜。」
それを聞くと、ゴンの内からじわりと不安がよみがえった。
内心少し心配していた。
(できてるかな…。やっぱり俺も手伝えばよかったかな?)
ゴンはそう思っていたのだが、それは皆の住処についたときに解消された。
レオリオが笑顔で迎えてくれたのだ。
(できたんだね?)
(おぅ、ばっちりよ!)
レオリオの表情での合図にゴンは気をよくした。
そしてゴンは衝動的にキルアの手を引っ張った。
「ゴン、どうした」
「まぁまぁ。」
疑問を浮かべるキルアにそれをなだめるレオリオ、
そしてキルアの手を引いて夢中で走るゴン。
3人で準備したパーティ会場でゴン達は立ち止まった。
キルアの視界がぱぁっとひらけた。

『キルア、お誕生日おめでとう!』


---後編へ



あとがき

キルアの誕生日話。
前半は準備の様子。ゴンも大切な役割を担っているのです。
ちなみにヒソカはプレゼントを置いて帰り(帰らされ)ました。



戻る    最初に戻る