いまや荒地となったところに置かれていたひとりの赤ん坊。 ぜい弱な泣き声をあげるそれに俺は手を差し伸べた。 抱き上げた瞬間にお前は泣き止み、俺を見た。 そのとき俺は確固たる何かを感じた。 数年前、その赤ん坊はクロロに拾われた。 猫の首根っこをつかむかのごとく持ち上げられた赤ん坊。 それを見て団員達はざわめいた。 「クロロ…それ何だ?」 A級賞金首with赤ん坊、落ち着いて受け入れられるものとは思えない。 クロロはざわめきがおさまるの見計らってから、 真剣なまなざしで周りの視線を捕らえた。 そして宣言した。 「だ。これから俺たちが育てる。」 「え。」「はぁ!?」 天を突き抜けるような叫び。 それと共に周りはさらににぎやかになる。 「赤ん坊なんて育てられるの?」 「でもクロロ、マジだぜ。」 「いいのかよ…。」 困惑の声が流れる。しかしクロロはあっさりとそれを聞き流した。 そして話を進めるがごとく、さらに重みのある声を出した。 「異存はないな。」 一瞬にして息が詰まる。 団長ならではの威圧感のある雰囲気に、皆、沈黙せざるを得ない。 少しして、このままではラチがあかないと思ったある一人が声を出そうとした。 しかしそれはふとキャッキャッと声を出した赤ん坊によって、 無意識のうちに止められてしまった。 赤ん坊は先ほどからクロロにずっと持ち上げられた状態にもかかわらず笑っていた。 (何が楽しいんだ…。) 赤ん坊の様子にうなだれる者もいたが、とりあえず皆、 真剣なクロロの命令を断ることは出来ないと判断したため、口々に肯定の返事をした。 そのことが赤ん坊にわかったのかどうかは知らないが、 その時、その子は明るい効果音が鳴りそうなくらい満面の笑みを振舞った。 (かわいい…。)×13 その子はその一瞬で皆を魅了し、 そしてその魅了された者達はせっせとその子を世話していった。 その甲斐あってかその子は、小柄だけれども健康的に成長していった。 そして数年後、現在にいたる。 |