それはある冬の日のこと。
「ねぇねぇキルア雪が降ってるよ!」
の軽快な声が上がった。
外では薄力粉をふるいにかけたような雪がちらほらと舞っている。
雪は地面にぶつかり、やわらかい草を少しずつ白く染めていた。
「まじかよ!どおりでさみー…」
少し不満そうに話すキルア。
その言葉をさえぎっては声を出した。
空に向かって。
「つもるかな!?」
―数時間後―
「うっ……わぁーーー!まっ白ー!!」
窓の外には一面の銀世界が広がっていた。
のうれしそうな声がはじけとんだ。
「そうだな♪」
キルアもどことなくうれしそうだ。
「外でよ!外でよ!」
ははしゃぎながらキルアの袖を引っ張った。
「さみーけどまぁいっか。」
キルアはかすかな胸の高鳴りを感じつつ、について行った。
その気持ちを気に留めることは、そのときはほとんどいたらずに。(雪のせいかな?あんなの家でいくらでも見れたのに…。)
外は白銀の世界。
木々も草花も地面もみんな雪に覆われていて、太陽の光できらきらと輝いている。
「きれーい!しろーい!冷たぁい!んー--♪」
はこの白銀の世界ではしゃぎまわっていた。
わかっていてもとめられない。
童心がうずいてしょうがないのだ。
「私のとこねーあんまし雪降らないんだー。降ってもめったにつもらないし。だからこんなにつもってるの見るの初めてー!」
はさらにはしゃぐ。
すると突然のほほに刺すような冷たさがぶつかった。
それは雪玉だった。の顔はその音と共に雪にまみれた。
「オマエはしゃぎすぎ。」
キルアはイジワルそうな声でそう言った。
は少しの間驚きで動けなかった。
しかし気を取り戻すのは早く、数秒後には口元がつりあがった。
は少し腰を下ろすと、近くにある雪をつかんでキルアめがけて投げつけた。
「やったなあー!」
「へっ!オマエのノロノロ玉なんて当たんねーよ。」
からかいながら素早く雪玉をよけるキルアにはムキになった。
(むぅーー!)「そんなことないもん!えい!えい!えい!えい!てぇい!!!」
は叫びながらさらに勢いよく雪玉を投げつけた。しかし結果は…。
「へへっ。オレの勝ち!」
キルアはニヤニヤしていた。
の投げた雪玉はあれから1つも当たっていなかった。
「ゼェ…ゼェ…はぁ…はぁ…。何で1つも当たらないのよ…」
息を切らす。
それを見下ろすキルアは得意満面の表情をしている。
「オレにかなうわけねーだろ。」
「ハイハイ…。」
にはすでに怒る気力もなかった。
頭についた雪はとけて、2人の髪をよりいっそう輝かせる。
疲れているのはだけのようだが、運動したせいか2人ともどことなくほほが赤い。
―休憩中―
2人はあまりぬれていない地面に腰掛けていた。
「はぁ、やっとましになってきたかもー。」
はひとつ伸びをした。
どことなく雰囲気が落ち着く。
キルアが話し始める。視線は遠くを眺めている。
「雪って楽しいものだったんだな。」
「え?」 はその意外な言葉に驚いた。
にとっての雪とは冷たいけれど楽しいもの。
それが当たり前と今も思っている。
キルアは続けて言った。
「オレんちさ…雪はよくつもったんだけど、そのときは楽しいなんて思いもしなかった…からさ…。」
瞳が少し哀しそうだった。
「良かったね!」
突然降った言葉に、キルアは目線を隣の人間に移した。
…そこには満面の笑顔が見えた。
おそらく何気なく言ったのだろう。
そのあとは何も言わずに、ただ純粋な笑みをうかべていただけなのだから。
キルアにはその笑顔と言葉がとてもまぶしかった。
そしてキルア自身に1つの光が生まれたように感じた。
(そっか……)
自分の中で何かケリが付いた。
そして思いついたように口を挟む。
「そういえばオレ雪合戦勝ったよね。」
「うん。」
「勝ったからごほーびちょうだい。」
は少し考えた。
「…私のチョコロボ君はだめだからね。あと少ししかないんだから。」
「ちげーよ。」
キルアはそう言うと、手を伸ばしてのあごをつかんだ。
「ん…。」合わさる唇。やわらかい感触。
「ごちそうさま♪」
唇を離すとキルアは満面の笑みでそう言って、軽い足音でかけていった。「…きぃーーるぅーーあぁーー!?」
の顔はとてつもなく真っ赤だ。「ん…もぅ…。」
逃げ出したキルアを思ってうつむく。
白い世界の中で赤い顔がひとつ。
2人の身体は冷たいけれど、唇だけはあたたかかった。
わかったんだよ…雪が楽しいのはオマエがそばにいるからってことが。
やってしまいました…。恥ずべき初駄文…。しかもドリームのくせしてドリームじゃないような。(←とてつもなく矛盾。)
この話は私の地方で初雪が降ったとき(全然つもらなかったけどさ) のことを考えて書きました。雪とキルアと戯れたいなあ…と。
2001年に作成、2003/6.書き直し