VSジャンゴ様


「キールア♪」
「なんだ、。」
「あのね、今度の日曜日にお芝居見に行かない?」
「お芝居か〜。どんなのだ?」
キルアは最初は行ってもいいかなという気持ちだった。
「えーとねぇ…。」

「ジャンゴ様が出るの。」

「却下。」

それはキルアがジャンゴの名を聞いてから
ほんの一瞬で出てきた言葉だった。
「何でさー。」
「俺、ジャンゴ苦手なんだよ。」
「何で?ジャンゴ様美人じゃん。」
そのときキルアはエルライス王国(ミュージカル2000.2001年より)
でのことを思い出していた。
そしてジャンゴに延々と追いかけられたときのことが頭に浮かび
思わず身震いした。
「苦手なものは苦手なんだよ!……ぅん…。」
キルアはつい怒鳴り気味になった自分を少し恥じた。
しかしはそんなことは気にせずにキルアに背を向けた。
「うーん。じゃあクラピカでも誘おうかなぁ?
ゴンはお芝居ってイメージじゃないし。」

「わかった、行く。(即答)」

キルアはクラピカがを好いているということを思い出し
反射的にそう口に出した。
クラピカと一緒というのは…嫌だ。
「いいの!?じゃあ今度の日曜日にね!」
「あ…ぁ…。」


日曜日
「う、わぁー♪」
薄暗い客席の中、隣同士で座る男女。
傍目にはデートに見えるかもしれない。
ならば、キルアはこれはデートだと思うことで、
ジャンゴという名の気を紛らわせようとそう心がけた。
もちろん、当のは「デート」なんてことは微塵にも考えてないみたいだ。
ジャンゴのことをあんなにらんらんとした目で語られてはそうとしか思えない。

キルアはそれでも一応「デート」という認識付けだけはさせようと思った。
一日中ジャンゴジャンゴじゃキルアの心が持たない。
?」
「ん?」
「なぁ、これってさデー…」
「デート」そう言おうとした瞬間、スポットライトが舞台の中央を照らした。
「きゃあ、ジャンゴ様ー!!」
キルアの声はこれ以上届くことはなかった。
キルアはそんなを尻目にため息を吐いた。

「あー、よかったぁvv」
「はいはい。」
芝居が終わり出口へと向かう。
キルアはやっと終わったと思い、今度は安心した息を吐いた。
まぁジャンゴも遠めに見るだけなら悪くないよな。
なによりこいつが楽しんでるし。
そんなことを考えながらキルアは軽快な一歩を踏み出そうとした。
「さぁ、帰るぞ!」
実にすがすがしかった。
しかしはそれをすぐさま打ち崩す一言を口に出した。
「何いってんの?出待ちもするよ。」
「……………帰る。」

冗談じゃない。
舞台を見るだけならまだしも、出待ちなんかできるか。
もしジャンゴに見つかったらそれこそあのときの悪夢がよみがえる。


キルアは踏み出した足を無理やりにでも押し進めようとした。

「………。」
「きーるーあぁー。」
しかしはキルアの服をつかんで離さなかった。
2人はこのまましばらく動かなかった。
「俺はや」
少ししてキルアはこのこう着状態を打ち消すため、
何とか文句を言おうとした。
その途中、出入り口を中心に悲鳴が聞こえた。
「あっ。」
「げ。」
はその歓声を聞くとあっさりとキルアから離れてしまった。
キルアは逃げるか否かで迷った。
を放って帰るのはまずいと思ったのだ。


その判断に迷ったのがミスだった。
キルアは込んでいるからばれないかもと願っていたのだが、
少しの間、固まっているうちにジャンゴは見つけてしまった。
ジャンゴのファンに女性が多いことも災いしたのだろう。
ジャンゴは少年の銀髪を目印にその方向へ行ってしまった。

「キルアちゃん、いらっしゃってたのねぇ!!」

「……………。」

どうするよ、これ(=まとわりつくジャンゴ)。
周りが「何、あの子〜」とか「うらやましーい」とか言ってるよ。
頭の中のほとんどは「逃げたい、逃げる、逃走確定」って
言っているんだけれど…そういえばはどこだ?

はゆっくりとキルアに近づいてきていた。
その間、キルアとジャンゴとの間で口論が始まった。
正確にはジャンゴの突拍子もない言葉に
キルアが否定のつっこみを入れ続けているだけなのだが。

「キルアちゃん、やっぱり私のことを愛していたのねぇ!」
「んなわけねぇだろ!」
「恥ずかしがらなくても良いのよ〜。」
「恥ずかしがってねぇ!ていうかお前スターだろ!?
仮にもそんなスキャンダルになりそうなこと言って良いのかよ!」
「うふふ、キルアちゃんは私のだんな様になる人だから良いのよぉ。」
「ならねぇ、んなもん絶対ならねぇ!」

周りはかなりの者が引いていたが、
それでも好奇心には勝てず、ざわつきながらその様子を伺っていた。

一方、は人ごみを掻き分けてやっとキルアに近づくことができた。
そして口論に夢中になっている2人を少し眺めた後、
複雑な表情を携えながら、2人に水を差した。
「キルア…ジャンゴ様と知り合いなの?」
「まぁ…。」
一応とキルアが答えようとしたときジャンゴが口を挟んだ。
「あっらま〜、かわいらしいお嬢さん!キルアちゃんのお友達?」
ジャンゴのきれいな顔が星が飛ぶような笑顔を作った。
「は、はい。」
すぐさま、その笑顔を見たファンがばたばたと倒れた。
しかしは弱冠顔を赤らめるだけだった。
それでも複雑な感情はぬぐいきれず。
はそのことを疑問系で自覚し始めていた。

(………なんかなぁ…)

そしてキルアもまたの様子がおかしいことに気がつき始めた。

(あいつ…ジャンゴのことを語っているとき、
よっぽど大好きだってオーラ出していたくせに…
もし本人に会ったら飛びつかんばかりの勢いだったぞ、あれは。)
それなのにいまいちうれしさの足りないあの感じは………マジ?


キルアはその考えに結論をつけると、
顔に火がついたように赤くなってしまった。

その間、ジャンゴはの両手を握り、ほぼ一方的に話をしていた。
「キルアちゃんのお友達は私のお友達!よろしくね〜v」
「はぁ…///」
普段ならうれしい、そう、絶対にうれしいはずなのだがどうも浮かない。
それはおそらくキルアとジャンゴが仲良さそうに見えたから。
イコール?

「おい、!」
ふと、キルアはの手をジャンゴから奪い取り、駆け出した。
そしてジャンゴに一言。

「俺―こいつのことが好きだから―――。」

「…キ…ルア?」
そしてキルアは満面の笑顔をに向けた。

一方ジャンゴは少しの間立ち尽くしていた。
(かっこいいわ…。)
ジャンゴはそのまぶしいほどのキルアに放心しそうになった。
しかしそこは大人の女。
何とか気を持ち直して、じきに軽く笑みを作った。
周りに人がたくさんいたため、まだ二人はそれほど遠くない距離にいた。
ジャンゴは両手を口に沿え、良く通る大きな声で言った。
ちゃん、キルアちゃんと仲良くね〜。
もしケンカなんてしたら、私がキルアちゃんもらうわよ〜!」

その言葉ではやっと心から歓喜の表情ができた。

「―――――はい!」

♪おわり♪


ジャンゴ様の性格付け…書けば書くほど年齢詐称気味になってます。ごめんなさい。
出待ち…やるなら大人しくやるべきものだと思います。暴走するのは問題外。
無駄に目立ったら大好きな人に悪印象もたれかねません。



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