ピュア?キス


「ねぇねぇ、。」

振り向けば、

ちゅっ。

呼び止められれば

ちゅっ。

どうなんだろう、これは。
まさかゴンがキス魔だったなんて、思いもしなかった。

「お前ら相変わらずラブラブだなぁ。」
レオリオが茶化す、キルアもにやける。
ゴンは笑顔で、私は真っ赤なまま押し黙る。
「へへッ。」
なんて言って、またキスをされると
私は岩にひびが入ったように瞬時にかたまった。

誰がこんなこと予想できるのだろう。
あの純粋なゴンが。
キルアとの友情がいっぱいで、
女の子との恋愛なんてみじんもなさそうなゴンが、いきなりこれだよ。
「おれ、のこと好きだよ。」
なんてシンプルでいかにもな言葉を言って。
私はゴンのことだから、キルアに対するような
友達の「好き」と同じことを言っていると思った。
だから「私も好きだよ」と返した。
それが「love」か「like」はまだわからなかった。
そうしたら、

ちゅ。

白い世界にピンク色のペンキをぶちまけたような錯覚を覚えた。
私は即座に魂が抜けたのを感じた。

そのあと私たちはゴンに流されるまま、恋人になった(早)。

ゴンいわく。

「ミトさんに教わったんだ。キスは大好きな人にするものだって。」
それはまちがってない、けれど何かがふに落ちない。
ゴンは話し続けた。
小さいころのミトさんとの話を。

『俺、ミトさん好きだよ。』
その大きな目には純粋な疑問の色。
ミトはゴンと目を合わすと、優しくその頭に手を乗せた。
『なんていうのかな…。
家族に対するものとも、友達に対するものとも違う「好き」…。
難しいかもしれないけれど、あなたが成長したとき、きっとわかるわ。』
今も印象に残るミトさんの微笑。


「俺そのときはあんまりわかってなかったと思う。
でもと一緒にいて、のこと好きだと思った。
ずっといると、ミトさんへの「好き」ともキルアへの「好き」とも
微妙に違う気がして、俺はこれがそうなんだと思った。」
つたない言葉だけれど、かえって一生懸命さが伝わる。

私はゴンの話を黙って聞いていた。
いや、返す言葉がなかったんだと思う。
ゴンは真剣に考えていたんだ。
ゴンは純粋に私を異性として好きなのであって、だからキスをする。
あぁ、私はこんなにも愛されているのだ。
そう思うと、なんだか自分の未熟さが恥ずかしい。
私は思わず目を伏せた。

ゴンからはたくさんの愛情表現を受けているのに、
私はまだ、なにも彼に与えていない。
一応、そう…コイビトなんだけど。
私は照れくささゆえに、ただゴンの愛情表現に押し流されているだけ。
今の気持ちは…多分「love」だとは思うけれど。

私は顔を上げ、ゴンを見据えた。
私はゴンぐらい積極的ではないけれど、
せめてこれくらいは、そう思いながら。
「ゴン…目ぇつぶって。」
ゴンは頭に?マークを浮かべていたけれど、素直に目を閉じてくれた。

ゴンを見つめていると、唇が震える。
それでも私は、たとえ震えをおさえられなくても、
ごくゆっくりと自らの顔をゴンの顔に近づけた。

それは1分が1時間にも思える体感。

ちゅ。

という軽い音すら聞こえないくらい
ごくごくやわらかいキス。

私からゴンへの初めての―――。

そう余韻に浸ろうとしたら、突然ゴンから力がかかった。
「!」
傍目には押し倒された状態。
私は目をぱちぱちとさせた。
眼前のゴンは、満面の笑みをむけている。
そのゴンの表情のせいか、私は危機感を感じるのが少し遅れてしまった。
影が近づいてきたときにはもう遅い。
そしてまた私の視界はゴンに奪われた。

ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅ…。

降ってくるはキスの雨。
いつか見た流星群より衝撃的なそれ。
幾数にも鳴る軽快な音はすでに耳に入らず。

私がまたまた放心したのは言うまでもない。

あぁ、無邪気って恐ろしい。


---END---


あとがき

最近キス有りのものを書いていないと思いまして。
どうせならキスを主題に。キス魔はあえて純粋な人を暴走させたいなとゴンに。
甘いですか?個人的にはかなり恥ずかしい部類に入ります。


戻る    最初に戻る