「〜v」 「うわっ!いきなり抱きついてくんな!!」 とヒソカの逢瀬(って違っ!)はいつもこんな感じで始まる。 いきなり現れては、こと私に迫ってくる。 実に迷惑な奴だ。 しかもこの前なんかヒソカにキスを迫られた。 いや、迫られること自体はいつものことなんだけれど、 そのとき何とか逃げようと顔を後ろへと背けたら、 そのまま頭を地面に打ち付けてしまった。 すごく痛かった。 ヒソカが私の背中に回した手を、突然放したせいだ。 そして、そのことについて怒りの言葉をプレゼントしたら、 ヒソカの奴、こう言ったんだ。 「やっぱり、ボクに抱きしめていてほしいんだねぇ〜vv」 ふざけんな。 さて…ってそんなことを思い出している間に、 また前と同じような体勢になってしまった。まずい! 「ククククク…。」 「はなせっ、おい!」 はヒソカを少しでも離すためにその顔を押した。 しかし力の差は歴然であり、ヒソカはそんなことにはびくともしなかった。 戦いは続く。 「嫌だよ。ボクの愛を受けてくれるまでは放さないよ。」 「嫌なのはこっちだ!やめんか、こらっ!!」 「クク…かわいいねぇ…。」 必死の抵抗、しかしやはりヒソカに敵うはずもなく、 ヒソカの顔はどんどんとに近づいていった。 はあまりの恐怖にとっさに目を閉じた。 その瞬間、数本の針が2人の横をかすめていった。 …いや、いくつかヒソカに刺さっていた。 「や。」 「イルミ!」 針が飛んできた先にはやはりイルミがいた。 イルミはヒソカの友人である。 そしてはヒソカを通してイルミを知っていた。 イルミは無表情で2人を見ていた。 「何の用?」 「イルミっ、助けて!」 はそのままの体勢で切願した。 しかしイルミはそれを気にすることはなく、ヒソカに対して話を進めた。 「この前のさ、依頼の料金がまだ振り込まれていないんだけど。」 「あぁアレ、忘れてた。後で振り込むよ。」 「…払ってくれるなら良いんだけど…。」 その直後、には一陣の風が吹いたように感じた。 ほんの刹那のことだった。 …え? ふと顔を見上げると、実に不思議なことが起こっていた。 を抱きしめている相手が、ヒソカからイルミへと変わっていたのだ。 そして一言。 「払わないなら担保として、この娘もらうよ。」 なんで!? はイルミの言葉に驚きを隠せなかった。 しかしすぐさま弁解に入った。 「違っ。私はヒソカなんかのものじゃない!」 「そうなの?」 「いや、いずれボクのものに…。」 「なるかっ!」 必死の攻撃。しかしそれは空を切った。 「…ふぅん。」 イルミは抱きしめている力を少し緩めた。 しかし、今離れたらヒソカに余計に何かされそうな気がするので、 はイルミから離れなかった。 ヒソカから黒いオーラが出始めていることなんか、 むしろ気にしないようにして、はイルミにしがみついていた。 ヒソカがこちらを見てる…こわっ…というか血止めろよ。 ふと、ヒソカが今の状態に痺れを切らしたのか、イルミに声をかけた。 「ねぇ、もうそろそろ放してもいいんじゃない?」 「俺は良いんだけど…この娘が放してくれない。」 「ならばこのまま連れ去ってくれ!…それかあいつ殺して!」 あいつとはもちろんヒソカのことでそれを願ったのはもちろん。 「…殺しの依頼は高いよ。…払える?」 イルミがこちらを見た。 はイルミの黒真珠のような瞳に一瞬圧倒されたが、 それでも一応きいてはみた。 そのとき返ってきた答えはあまりにも無情なものだった。 「10億J。」 「…絶対無理………。」 こうしてヒソカを消す最初にして最後の手段は泡沫(うたかた)の夢として終わった。 とは言っても、ここでイルミから離れたら、身が危険なのは確かだ。 はそう思い、再びイルミに尋ねた。 「じゃあ、このまま家まで送ってよ。それなら安価でも良いでしょ?」 「いいよ。じゃあ、早速行くよ。」 また風が吹いた。 すぐさま忌々しい背景(というかヒソカ)はすがすがしい背景へと変わった。 少ししての家に着いた。 「ありがとうvイルミ。はい、これお礼。」 「どうも。…じゃあね。」 「うん、ばいばーい。」 イルミは礼をもらうと早々に帰っていった。 (続く) |