キミのそばに<前編>


〜v」
「うわっ!いきなり抱きついてくんな!!」
とヒソカの逢瀬(って違っ!)はいつもこんな感じで始まる。
いきなり現れては、こと私に迫ってくる。
実に迷惑な奴だ。
しかもこの前なんかヒソカにキスを迫られた。
いや、迫られること自体はいつものことなんだけれど、
そのとき何とか逃げようと顔を後ろへと背けたら、
そのまま頭を地面に打ち付けてしまった。
すごく痛かった。
ヒソカが私の背中に回した手を、突然放したせいだ。
そして、そのことについて怒りの言葉をプレゼントしたら、
ヒソカの奴、こう言ったんだ。
「やっぱり、ボクに抱きしめていてほしいんだねぇ〜vv」
ふざけんな。

さて…ってそんなことを思い出している間に、
また前と同じような体勢になってしまった。まずい!
「ククククク…。」
「はなせっ、おい!」
はヒソカを少しでも離すためにその顔を押した。
しかし力の差は歴然であり、ヒソカはそんなことにはびくともしなかった。

戦いは続く。
「嫌だよ。ボクの愛を受けてくれるまでは放さないよ。」
「嫌なのはこっちだ!やめんか、こらっ!!」
「クク…かわいいねぇ…。」
必死の抵抗、しかしやはりヒソカに敵うはずもなく、
ヒソカの顔はどんどんとに近づいていった。
はあまりの恐怖にとっさに目を閉じた。
その瞬間、数本の針が2人の横をかすめていった。
…いや、いくつかヒソカに刺さっていた。

「や。」
「イルミ!」
針が飛んできた先にはやはりイルミがいた。
イルミはヒソカの友人である。
そしてはヒソカを通してイルミを知っていた。
イルミは無表情で2人を見ていた。
「何の用?」
「イルミっ、助けて!」
はそのままの体勢で切願した。
しかしイルミはそれを気にすることはなく、ヒソカに対して話を進めた。
「この前のさ、依頼の料金がまだ振り込まれていないんだけど。」
「あぁアレ、忘れてた。後で振り込むよ。」
「…払ってくれるなら良いんだけど…。」
その直後、には一陣の風が吹いたように感じた。
ほんの刹那のことだった。

…え?

ふと顔を見上げると、実に不思議なことが起こっていた。
を抱きしめている相手が、ヒソカからイルミへと変わっていたのだ。
そして一言。
「払わないなら担保として、この娘もらうよ。」
なんで!?
はイルミの言葉に驚きを隠せなかった。
しかしすぐさま弁解に入った。
「違っ。私はヒソカなんかのものじゃない!」
「そうなの?」
「いや、いずれボクのものに…。」
「なるかっ!」
必死の攻撃。しかしそれは空を切った。
「…ふぅん。」
イルミは抱きしめている力を少し緩めた。

しかし、今離れたらヒソカに余計に何かされそうな気がするので、
はイルミから離れなかった。
ヒソカから黒いオーラが出始めていることなんか、
むしろ気にしないようにして、はイルミにしがみついていた。
ヒソカがこちらを見てる…こわっ…というか血止めろよ。

ふと、ヒソカが今の状態に痺れを切らしたのか、イルミに声をかけた。
「ねぇ、もうそろそろ放してもいいんじゃない?」
「俺は良いんだけど…この娘が放してくれない。」
「ならばこのまま連れ去ってくれ!…それかあいつ殺して!」
あいつとはもちろんヒソカのことでそれを願ったのはもちろん
「…殺しの依頼は高いよ。…払える?」
イルミがこちらを見た。
はイルミの黒真珠のような瞳に一瞬圧倒されたが、
それでも一応きいてはみた。
そのとき返ってきた答えはあまりにも無情なものだった。

「10億J。」

「…絶対無理………。」

こうしてヒソカを消す最初にして最後の手段は泡沫(うたかた)の夢として終わった。
とは言っても、ここでイルミから離れたら、身が危険なのは確かだ。
はそう思い、再びイルミに尋ねた。
「じゃあ、このまま家まで送ってよ。それなら安価でも良いでしょ?」
「いいよ。じゃあ、早速行くよ。」
また風が吹いた。
すぐさま忌々しい背景(というかヒソカ)はすがすがしい背景へと変わった。

少ししての家に着いた。
「ありがとうvイルミ。はい、これお礼。」
「どうも。…じゃあね。」
「うん、ばいばーい。」
イルミは礼をもらうと早々に帰っていった。
(続く)


あとがき

続いてしまいましたね。

イルミ「無駄に長いから…。」

ヒソカ「というかボクのドリームはずなのに、どうして途中からイルミに?」

え、笑顔が黒いよぉ…続きがあるから…ね。



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