ミーーーンミンミンミンミン…ジーーーーッジーーーーッジーーー………

最高気温は体温並みのこの季節にとクラピカの2人は外に出なくてはならなかった。

なぜなら……………

「あ゛〜、なんでこんな日に買い出しに行かなくちゃならないのよ。」

「しょうがないだろうじゃんけんに負けたのはだ。」

「でも〜。」

(レオリオのせいだ。)はそう思いうつむいた。

もともとはレオリオの「暑いから飲み会やろーぜ!」一言で始まったのだ。

それに過半数がそれに賛同してしまった。

そして買い出しのためのじゃんけんの結果、は負けてしまった。

は暑さの中外に出る羽目になったのだ。

唯一の救いは「ひとりじゃかわいそうだろう。」とクラピカがついてきてくれたことだけだ。

それでも暑いことには変わりない。

日差しは無常なほどにさんさんと照っているのだから。

は今にも溶け出しそうな様だった。

クラピカはそんな少女をただ横目で見ていた。

(大丈夫か…?)

そう思った矢先にが視線の先から消えていた。

?」

そうつぶやき下を見るとしゃがみこんでいるがいた。

(暑さにやられたか…?)

そう思い、先ほど案じた一言を口に出しながら手を差し伸べた。

しかしは意外と落ち着いて地面にあるものを見ていた。

「どうしたんだ?」

「……蝉。」

地面にあったもの、それは蝉の死骸。

歩いているときにもちょくちょく地面にあったその一つには着目した。

クラピカにはの空虚な瞳は蝉の何を捕らえているのかわからなかった。

(やはり暑さにやられているのか?)

そうとしか考えられなかった。そして先ほどと同じ問いをした。

今度は答えなかった。

が、少しの間を置いてからは突然蝉のことを話し出した。

「蝉ってさーおなかからっぽなんだよー。知ってた?」

クラピカはが何故こんなことを話すのかわからなかったが、

とりあえずそれに答えることにした。

「あぁ。」

「さっすがクラピカ、博学。そんで外に出ると短い命なんだよねー。」

「あぁ…。」

「…でも、がんばってるんだよね。」

「あ…ぁ。」

いったい何が言いたいのだろう。

空虚な腹と短い命とそれでもがんばっている…。

クラピカはなぜか不愉快な気分を覚え、から顔を背けるように上を向いた。

しかし余りにも強い日差しがちくちくと降り注ぎ、思わず目を背けてしまった。

結局クラピカはの方を向かなければならなくなった。

はもう話すのをやめていた。ただ蝉の死骸を見つめているだけだった。

2人の顔に一筋の汗が流れる。聞こえるのは蝉の泣き声だけ。

なぜかうるさいはずなのに周りが静かに感じた。

クラピカはぼんやりとを見ていた。

しばらくして汗のしずくが2人の頬からすべり落ちた。

クラピカは無意識にそれをぬぐおうとしたがは何もしなかった。

クラピカはが動かないことに少し心配した。

しかしそれが地面についた瞬間は突然立ち上がった。

「わるくはない…か。」

そうつぶやいて、しゃがみこむ前より幾分か元気なさまでかけようとした。

「クラピカ、行くよ!」

クラピカは呆然とそこに立ち尽くしていた。

は蝉を見ていったい何を感じたのだろう。それが心残りだった。

気がつくとはクラピカのほうに近づいて手をにぎっていた。

じっとりとした感触が手に伝わったが2人はたいして気にしなかった。

それよりクラピカが気になるのは…のことだった。

「蝉に対してのおまえの行動…いったい何の意味があるんだ。」

「んー、なんとなく。」

「じゃあ『わるくはないか』の意味は?」

「聞こえてたんだ。…そうだね。クラピカがそれに気づくようになればいいな♪」

は質問に答えていなかった。

クラピカは質問の間ずっと真剣な目をしていたが、

が妙な答えをするのでそれを保つことが出来なかった。

「そうか…。」

(きっと暑さボケだな…。)

クラピカはそう判断して、早く目的を済まそうと足早に歩こうとした。

少しだけ先ほどのことを考えながら。握られた手は離さないままで…。

(クラピカわかってるのかな?

命に限りがあることがわかっていて、それでもがんばる者は、

例えからだの中が空虚でも、きっとたくさんの見えないものがつまっている。

そう、こんな何気のないことでも2人の中に蓄積されるのだろう。わるくは…ないよね。)

はクラピカの見えないところでそっと笑みをもらした。

握った手に少しだけ力をこめながら。

− END -




あとがき


本当にいったい何を書きたいんだろう…。暑さボケは私ですか。

わけのわからない主人公。蝉によって暑さからよみがえる主人公…。

ちなみに蝉のおなかが空っぽなのは国語で習いました。

私はてっきり気味の悪い臓物があると思ったんですけどねぇー(遠い目)


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