桜
空は青々としていて、柔らかな日差しが降り注いでいる。
しかしそれは身体だけを温めてくれるもの。
時々そよ風が髪の毛を揺らし、頬をくすぐる。
それは思わず目をつむりたくなるほどの感覚。
クラピカは自然の中を散歩していた。
特に理由はない。なんとなく外へ出たかった、ただそれだけである。
「気持ち良いな…もう春か…。」
そんなことを思いながら歩いていた。
ひとつの木に目が止まった。
「サクラ…」
桜の木。季節柄、今はちょうど花が咲いている。
クラピカは穏やかな表情を浮かべたままその木に触れた。
そして少し物憂げな瞳を隠すようにうつむいた。
…想うのは昔のこと…花と、昔の仲間と一緒に戯れていたころ…
つい時の流れを感じたくなくなる。
もう少しこのままで…しかしそうはいかないのが現実。
クラピカは近くに誰かがいることに気がついた。
その方向に視線を移すと木の後ろから一人の少女が姿を現した。
「?」
その少女は肯定するようににこりと笑った。
「どうしたんだ?」
クラピカは一転して微笑を浮かべた。
しかしはその問いには答えず、桜の木を見上げてじっとしていた。
「サクラきれいだねー。」
「そうだな。」
クラピカはのあまりにもほんわかとした雰囲気にそう言わざるを得なかった。
2人はしばらく桜に見入った。
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--可愛らしい少女。
ゴンとは違った感覚で私を癒してくれる。
…いや、無意識に癒されているといった方が正しいだろう。
彼女が微笑めば微笑み返してあげたい、いつのまにかそんな感情が芽生えていた。
それは不思議と愛しさまで感じるようになってしまった。
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気がつけばはその木を抱きしめていた。
クラピカは不思議に感じた表情でそれを見ていた。
はしばらく木の感触を確かめているようだった。
それはまるで深い何かで包み込んでいるかのように見えた。
クラピカはついに我慢できなくなってに何をしているのかと尋ねようとした。
しかしそれより先にの声が聞こえた。
「聞こえる…」
「?」
「どきどきしてる…」
「!?」
なぜか心臓が跳ねあがった。
そしてがクラピカの方を見たとき、クラピカは心が見透かされたような感覚を覚えた。
はまだクラピカの方を見つづけている。
「クラピカー…」
「何だ?」
は木から離れて、小箱を差し出した。
「誕生日おめでとう。」
何か温かいものが流れるのをクラピカは感じた。 それはお日様よりも確実に心を温めてくれるもの。
(そうか…)
「ああ…今日は…」
「4月4日、クラピカの誕生日♪」
はにっこりとわらった。
桜の花びらが舞う。
それはにまとわって、彼女をより美しく彩っていた。
クラピカは手の中にある小箱より、その笑顔の方が最大のプレゼントのように感じた。
「…」
「なぁに?」
「ありがとう。」
クラピカは同じく最大の笑顔で返した。
その後、2人は笑いあった。
風に舞う花びらが2人を優しく包んでいた。
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あとがき
クラピカバースディドリーム。(←どこが)
私の誕生日(4/8)って花祭りだから、クラピカの誕生日(4/4)は桜咲いてるよね。
と思って書きました。