ぬいぐるみになりました


ハンター×ハンターRというラジオ番組内でのコーナー、
「ゴバンニとキルパネルラの旅」にて、
以前、ふわふわ星へ旅をしたゴンとキルア。
そこから帰ってきて、荷物の整理をしていたときのこと。
「お前それ何?」
ゴンがバッグから出した箱を見てキルアがたずねた。
「これ?ぬいぐるみまんじゅう。ふわふわ星で買ったんだ。」
「いつのまに…。でもさ、これ、大丈夫なのか?」
「え?」
不思議といった表情でキルアを見るゴン。
キルアの表情は少し不安げ。
「ふわふわ星の食べ物だろ?食ったらぬいぐるみになるんじゃ…」
ふわふわ星の食べ物は、食べると自らがぬいぐるみになってしまう。
ふわふわ星の案内にも書いてあったことであり、
なによりそのことは自分達が身を持って体験したばかりだ。
「大丈夫じゃない?ここふわふわ星じゃないんだし…。」
元に戻るには、30分以内にふわふわ星の外に出ること。
早く出ないと永遠にぬいぐるみのまま…。
「でも、ぬいぐるみになる成分は入ってるんじゃねーのか?」
「うーん、どうだろ?」

画して、ぬいぐるみまんじゅうを食べることに疑問を抱いた二人は、
そのぬいぐるみまんじゅうの箱を、机に置きっぱなしにしてしまった。
それからおよそ2週間…。

クラピカが二人に会いにきた。
「クラピカ!」
「久しぶりだな。」
「そうだな。」
そんな風に3人は再会の喜びを分かち合っていた。
それから少しして、ふと、クラピカは机に乗っていた箱に目を向けた。
「これは?」
むしろ忘れていたといってもかまわないくらい
そのままにしてあった箱を見つけられ、二人は気まずい顔をした。
「…まんじゅう?」
箱を手に取り隅々まで眺めるクラピカ。
ふと、クラピカは箱の隅に書かれていた表示に気づく。

「賞味期限が今日ではないか!」

中身が十分にあることは手に取ればわかる。
「もったいないから食べるのを手伝うぞ。」
箱を開け、中身を手に取るクラピカ。
「え。」
それを見てゴンとキルアはあわてだす。
しかしクラピカは、そんな二人を気にも留めずにまんじゅうにかぶりついた。

……………ぽんっ。

ある意味予想通りな出来事。
だが起こってほしくなかったことには変わらず、二人は言葉を失った。
『なんだこれは!?』
自分の体の変化に即座に気づいたのか、
自分の手を見つめながら、震える2〜3頭身の身体。
はたから見るとかなりかわいい。
そう、クラピカぬいぐるみの完成だ!

「あー…。」
「つーか、なるんだな。」
半ばあきらめの態度でぬいぐるみになってしまったクラピカを見つめる二人。
クラピカは自分なりに怒っている表情で二人を見つめ返した。
しかし、ぬいぐるみになっているため、迫力は皆無だ。
「えーとね、ふわふわ星の食べ物って食べるとぬいぐるみになっちゃうんだって。」
「星の外に出ると元に戻るって言うから大丈夫だと思ったんだけどなー。」
『(この場合)元に戻る方法は?』
「さぁ…。」
「しらねぇよな。だってここふわふわ星じゃねーし。」
二人の投げやりな言葉に余計に怒りがわくクラピカ。
ぬいぐるみの身体に紅いオーラがたぎる。
「お、俺、元に戻る方法を探してみるから!」
「だな!いくぜ、ゴン!」
どうやらクラピカの怒りを本気で感じたらしい二人は、
引きつった顔でそのように言った後、すぐさま外へ走り出した。
クラピカは二人が去った後に深くため息をついた。
『はぁ…。』
部屋に残るはクラピカ一人。

10分後、クラピカは今の身体を持て余していた。
(動きにくい…)
ぬいぐるみの身体なら仕方のないことなのだろう。
まさか自分がぬいぐるみになるとは…
憂えながら天井を見上げる。
この姿ではいすに座ることすら出来ない(届かないから)。
仕方がないのでクラピカは壁にもたれて、座って二人を待つことにした。

それから少しして。
「ゴン、キルアー。遊びに来たよー。」
ゴンやキルアのものではない声がクラピカの耳に入った。
この声は…だ。

突然の訪問者にクラピカは息を呑んだ。
「いないの?」
この姿ではどう対応すれば良いのかわからない。
できることならこのまま立ち去ってくれた方がまだ安心できよう。
「…あれ、開いてる。」
の足音が近づいてきたところからすると、
どうやらこちらに向かっているらしい。
勝手知ったる家だからって無断ではいるんじゃない!
クラピカがそう思ったのもつかの間、
すぐにはクラピカのいる部屋に入ってきた。
「待たせてもらおっと。」
反射的にクラピカの体は固まった。
(どうする!?)
そして、と目が合った。

……………。
「かわいい!」
ぎゅむぅっ!
(ぐはぁっ。)
目が合った瞬間、いきなりに抱きしめられたクラピカ。
あまりにも勢いが強かったため、思わず悲鳴を上げかけた。
だが、なんとか致命傷には至らなかったようだ。
「これ、どうしたんだろう?」
(どうしたもこうしたも私がまんじゅうでぬいぐるみに…)
ぐったりしながら、クラピカは思った。
声は出していないため、
にぬいぐるみがクラピカ本人であることは気づかれていない。
心配しないようにとの配慮のつもり…だったが…。
(選択を間違えたか…?)

「それにしてもかわいいなぁ。」
きらきらした目でクラピカを見つめる
思えばこんな輝かしい目で、しかも抱かれながら
こんな間近で、に見られるのは初めてかもしれない。
照れくさいなとクラピカは思った。

「誰が作ったのだろう?」
両手でぬいぐるみの手を持って、2度ほど軽く押す。
「ゴンやキルアがこんなにうまく作れるとは思わないし、
レオリオやヒソカ…は想像すると微妙に気味が悪いなぁ。」
くるくる変わるの表情は見ている者を和ませる効果を持つ。
クラピカの気持ちも穏やかになる。
「案外クラピカ本人が作ったものだったりして。」
しかし、がくっとするのも早かった。
(いくら私でもそんなナルシストみたいなことは…!)

あれからしばらくはクラピカを離さなかった。
よほどクラピカのぬいぐるみが気に入ったらしい。
そんなクラピカはかなり危ない状態にあった。
にずっと抱かれている。
そのせいで強い緊張がずっと続く。
(うぅ、なんと無防備な…。)
時折感じる柔らかな感触に、
クラピカは今にも心臓が破裂しそうに感じていた。

はクラピカを抱いたまま、暇を持て余していた。
ベッドに座って意味もなく足を揺らす、と 退屈が行動に現れている。
「はぁ…。」
はふと、座っていたベッドに身体を預けた。
もちろんクラピカは抱いたまま。

退屈が続くとやがて睡魔に襲われるもしばしば。
「んー。」
ぱたりとベッドに背中を預ける
クラピカを抱きしめる力をわずかに強める。
またクラピカの心臓がはねたが、
そんなことは露にも知らないはそのままゆっくりと目を閉じた。
(っておぉーい!)

しばらくして、ゴンとキルアが戻ってきた。
「クラピカー。ふわふわ星に問い合わせたんだけど、
外で食べた場合は消化されれば治るってー。」
「だからそのうち戻るんじゃ…。」
意気揚々と帰ってきた二人。
だがその様子は二人が部屋に入って数秒、
とクラピカを見つけたときに徐々に気分が落ちていった。
眠るに抱かれているクラピカ。
クラピカも疲れてしまったのか、いつの間にやら眠っていた。
それをじっと見つめるゴンとキルア。
「…俺らもぬいぐるみになる?」
「とりあえずこいつらが起きてからな…。」

うなだれる二人をよそにの寝顔はとても幸せそうだった。


---END---


あとがき

久々すぎる通常更新。リクエストのときで精一杯なんだろうか…。

ふわふわ星は実際にラジオにてあったネタですが、
ふわふわ星の外でふわふわ星の食べ物を食べたときどうなるかは
自分で好き勝手に考えました。



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