「あ〜、どうしてこんなに曲がるの〜!?」 オレの友達「」は今、マフラーを編んでいる。 何でももうすぐクリスマスだから、マフラーを編んでクラピカにプレゼントするんだそうで、 は数日前からそれに奮闘している。 こいつ編み物なんて初めてだそうで、最初は表編み裏編みすらもわからなくて、 本を傍らに見ては編むのが続いていた。 しばらくすると、は本から目を離し、編むことに集中するようになった。 一応の作業は少しずつ進んでいるようなので、 オレはやっと慣れてきたか…とひとつ息をこぼした。 しかし、すぐにそこから「あ、まちがえたっ。」と声が上がった。 オレは、初めはそのたびにの方を見て適当な言葉をかけてやったが、 今や、それらは聞きすぎて、飽きてしまった。 するとはさらに声量を上げる。 「何できれいにできないのー!?…ねぇ、キルア?」 「力の加減ができてないんじゃねーの?」 とオレがもっとも正しく且つシンプルに答えてやると、 「そうだけど、それが上手く出来ないんだよー!」と返ってくる。 その後すぐに、「こんなんじゃクラピカ、喜べないよぉ…。」と嘆いて。 オレは「ま、せいぜい頑張れや。」と返した後、 本棚から適当に取った、たいしておもしろくもなさそうな本を見ようと、その会話を切り上げた。 オレはクラピカがそれでも喜ぶことを知っている。 があまりにもよく嘆くので、オレはクラピカと二人きりのときにそんなことを訊いてみたのだ。 「なぁ、クラピカ。」 「なんだ、キルア?」 「アイツ…からプレゼントとかもらったらうれしいか?…あ、もうすぐクリスマスじゃん。」 そうしたらクラピカの奴、思い切り笑顔で返しやがった。 「当たり前だろう?」 「どんなものでもか?」 「あぁ。」 クラピカは、何が嬉しいのかそのときずっと笑顔だった。 あれならたとえぼろぞうきんをもらったとしても笑顔で受け取りそうな気がする。 そんなことを考えながらオレは軽く返事をした後、すぐにその話を終わらせた。 それ以来オレはがマフラーを編んでいるのを見るのに不愉快な気持ちがさすようになった。 元々、他の奴のために編んでいるマフラーの事なんてどうでもよかった。 しかしあれ以来、どうでもいいに上乗せして、うっとうしさまで感じるようになった。 それでもはふとしたときに、なんとなく近くにいるオレに声をかけてくる。 そしてオレは最後にはこいつをかまってしまう。 苦笑いしたくなる感情を胸に秘めながら。 多分、クラピカとの2人はクリスマスには不恰好なマフラーを手にして、 顔赤らめながら笑い合っているんだろうなぁ。 …なんてたまに思ったりして。
ちなみにからオレへのクリスマスプレゼントには余った毛糸で作ったと思われる 「食器洗い用毛糸のたわし」がおまけとしてついていた。 オレはどう使えと…などと思いながらも、とりあえずに感謝の笑顔を送った。 するとも同様の笑顔をオレに返してくれた。 オレはとりあえず、それだけでこのクリスマス、十分だよな?と思おうとした。 ふと窓の外を見ると、ちらほらと雪が降っているのが見えた。 ---END--- |
あとがき
私は、マフラー編もうとしても、いつも間違えてはなかなか進まなくて、結局できなくて、飽きている奴です。
そして翌年にまたやる気復活。この時点で編み棒1本なくしてます。…懲りない奴です。
以前母と、こういうのを親子代々受け継いでいくものなのよと話をしましたが、私で多分途絶えるでしょう。
あ、一応出来上がった作もあるのですよ。…アクリルたわしと、今年にやっと、曲がりまくっているマフラーらしきものが…。