* この文は「クロロ」という言葉自体はほとんどでてきません。
したがって「男」というのはクロロ(前髪下ろしバージョン)を想像してお読みください。


蜘蛛とタカラ 後編


「こんにちは。」

は驚きを隠しつつ同じ挨拶を返した。
「ここ…いい?」 
男が指したのはと向かい合う席。
軽い違和感を感じたが、特に断る理由はなかった。

---沈黙--- 

は男の方を見ずに、
ストローを加えたまま飲み物の方に視線を向けていた。
水のゆらめきで気を紛らわしたかった。
しかし男はそんな空間をたやすく打ち破ろうとした。
「キミさ…オレらのこと見てたよね?」
ほぼ、確証をもったセリフだ。
は思った。
表としては少女と男の二人を少し見ただけ。
は「見ていた」とは不適切だと思ったが
間違ってはいないので肯定の返事をした。
視線は合わさずに。
「そして…」 この次の言葉には目を見開いた。
「オレのことを尾けていただろう?」
「な………。」
顔を上げたとき見えた男の視線は、
まっすぐに剣を突き立てられたように鋭い。

は盗聴器が見つかったとしても、
それが自分によるものだとばれているとは思っていなかった。
意識を男の方へ向けると、その表情はすでに柔和なものに戻っていた。
「やはり…思ったよりも素直だな。」 
クスリと笑うその男にの頭が熱くなった。
「誰かが尾けているような気はしたんだけど、
それが誰か…どこにいるのかなかなかわからなくてね。
それでオレを見ていたキミに声をかけたというわけ。」
男の目が真剣になる。
「…希望も含めて。」
不思議な輝き。
それにみつめられ、は目がくらんだ。
そして最後に刺すはトドメの笑顔。
「キミの絶、見事だったよ。」

は目を見開いたまましばし固まった。
出会って間もない人間にほめ殺されるなんて誰が予想するだろう。
それでもは何とか気を取り戻そうと一言絞り出した。
「…ありがとう…。」
男は笑顔のままだった。

の頭の中は驚きや疑問でいっぱいだ。
(このままじゃラチがあかない。)
そう思ったは飲み物がなくなったのをきっかけにこの場を去ろうとした。
「じゃあ…ね。飲み物もなくなったことだし。」
やっと解放される。
そう思ったのが隙となったのだろう。
腕を引かれた。
そして受身を取るまでもなく、は口付けをうけた。
息苦しくなるまで深く、深く…。
「ん…ふぁっ…!」
唇が離れて、聞こえた言葉をは理解できなかった。

「オレのものにならないか?」

皮肉なことにに考える余裕はなかった。
「何を…言ってる…。」 今までの出来事に心がついていかない。
すると、男はまた顔を近づけた。
「オレが嫌か…恐いのか?」
確かめるような口調は言葉の罠だというのだろうか。
は混乱しているさなかにも何とか考えようとした。
(恐い…わからない。わからない…!)
わからなすぎて苦しい。
(…けれど……)
だが、やがて結論へとたどり着く。

は男の方を向き直すと、素早くその男に口付けた。
触れるだけのもの。
そしてすぐに男に背を向けた。
「わからない…わからないからしばらくそばにいる…。」
(…けれど…さっきのキスは………。)

「そういえば名前はなんて言うの?」
「クロロ…クロロ=ルシルフル」 男の低い声が胸に響く。
(クロロ…)
は頭の中でその言葉を何度も繰り返した。
男―クロロは口元だけで笑みを浮かべた。


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「ダンチョー、その女誰?」
団員の一人がを見てたずねる。
は幻影旅団のアジトに連れられた。
多少は予測していたことであったが、それでも幾分は驚いた。
だが、それでもはここから逃げようとは思わなかった。
口約束だろうと決めたことは守りたいから。

団員の問いにクロロは答えた。
…オレが見つけたタカラモノさ…。」


蜘蛛は必ず獲物を捕らえる。それがあなたの運命…

(END)



あとがき


シルバ&ゼノvsクロロは都合よりこの話では無視させていただきます。

クロロ「…これ、ずいぶん前に書いた文ではないのか?」

そうですね…。うっかり出し忘れまして…。

クロロ「さっさとアップすれば良いんじゃないのか?」

一度アップし忘れると、今の感覚だと恥ずかしいんです。修正するのも大変でやっと…。




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