関西人って…


うちのクラスには関西の人が二人います。
一人は同じサッカー部のシゲさん。
もう一人は…。
「なぁなぁ、ちゃん。宿題見せてーなv」
「またぁ?シゲちゃんいっつもやらへんやん。」
「俺、うっかり者でなぁ。」
けらけら笑うシゲ。
そしてそんなシゲに文句を言うのは、
もう一人の関西出身者、である。

この二人、結構仲が良いと周りに思われている。
といってもそれは少なくとも、にとっては傍目のこと。
同じ関西弁で話すから、慣れない東京の者には
自然とそう見えてしまうだけだと彼女は言う。

「仲良いねー。」
ふと、風祭がほのぼのスマイルをたたえてそう言った。
返答は二通りあった。
「そやろ?」
「そう?」
どちらの言葉も疑問符はつくが、
明らかに一つは肯定の返事で、もう一つは純粋な疑問だった。
口元を吊り上げて言ったのはシゲさんで、
少し強い目で見ているのがさんだ。

「いやぁ、やっぱりそう見えてしまうねんなぁv」
そういいつつ、シゲはの肩に腕を回した。
にかっと笑った顔がいかにも人懐っこさを強調している。
しかしはそんな笑顔に対して、
やや不機嫌そうな顔をして、シゲの手を払った。
「勘違いやん。」
「んなことないて。
この極東の地で俺とちゃんが出おうたのはまさに運命…。」
「夢見るな、アホゥ。」
目を輝かすシゲにのつっこみがビシッと決まった。
(やっぱり仲良さそうに見えるんだけどなぁ。)
風祭は苦笑を浮かべながらそう思った。

「大体ちゃんは何で俺に冷たいん?」
シゲがの顔を覗き込みながら尋ねた。
かすかに揺れる金色の髪が、光を反射して妙にまぶしい。
は思わず目を伏せた。
「………気のせいやろ。」
「その間は何や。」
「…我ながらつまらん理由やから、あんまし言いとぉない。」
だるそうな声を出しながら、は机に突っ伏した。
の周りの空気が揺れた。
シゲはやっと近づけていた顔を離した。
「(理由あるんか、て言うか認めとるし。)
気にくわんところがあるなら直すよう努力するでv」

はしばらく無反応でいたが、
やがて、自分を呼び続けながらまとわりつくシゲに嫌気がさしたのか
ふと視線を上げてシゲを見つめた。
「あのな…。」
(何やろ?)
シゲは好奇の目でを見つめ返した。
しかしが次の言葉を言ったとき、
ほんの一瞬、シゲは目を見開いたまま止まっていた。

「金髪は好かん。」

その場にひゅーっと乾いた風が吹きぬけた。
「ちょ…ちゃん。まさかそれだけとは言わんやろなぁ?」
シゲがあきれの入った瞳で見ながら尋ねた。
シゲの言い分は最もである。
それは単なる好みの問題。
しかも内面ならともかく「金髪は好かん」とうのは…。
それひとつで冷たくされるのはいまいち納得がいかない。
シゲがそう思うと、はもう一つ話した。
「それと誰彼かまわんとちゃらちゃらしているところ〜。」
そう言ってはまた机に突っ伏した。

シゲは手をあごにつけて考えた。
「それはつまり…やきもちということか?」
そういうとシゲはニヤリと口元を吊り上げた。
ごく普通の中学生なら、
動揺で顔を赤くしたまま文句を返してしまいそうなセリフだろう。
しかしそれでもは動かなかった。
「ちゃーう。うちはあんたみたいなのが
関西人というイメージをもたれるのが嫌なんや。」
「んなあほな。」
「世の中にはなー、おとなしゅうて繊細な関西人もおんねんで。」
まぁ、確かにそうだが。
「誰やねん、それ?」

「私。」

今度は完全に固まった…なぜか風祭が。
「おーい、カザー、ポチー…あかん、完全に固まってる。」
風祭の目の前でシゲが手を振りながら声をかけても、風祭は反応しなかった。
「なんでやー!」
は勢い良く顔を上げて叫んだ。
「まぁ、そういうことやろ。」
シゲはとりあえず、の言葉に対して軽く頭を叩いておくことにした。

「さーて、物事は解決したことやし、もうそろそろ授業やな。」
シゲは伸びをしながら歩き出した。
「何が解決してんねん!」
は立ち上がってシゲを見上げた。
ちゃんの言動についていける人間は俺だけってことや。」
シゲの顔がの近くにある。
シゲが上半身を下げて、わざわざに近づけたのだ。
は揺れた。
シゲからの圧迫感が…少し苦しい。
しかしもう一言シゲからの言葉が出たとたん、
そんなものは吹き飛んでしまった。

「つまり俺らはどちらにしろ結ばれる運命…。」

「アホッ!」

シゲの頭に降った手は実にイイ音を響かせたという…。

---END---


あとがき

注:私はシゲが嫌いではありません。桜上水なら2番目に好きです。
丁寧語の語りは風祭とでも思ってください。
言葉は私語を濃くした感じでしょうか。
最後に、私はこんな漫才をやったことなんて全然ありません!といいますか…これって漫才?



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