*クラピカが他の女性キャラクターとからむのが嫌な方は見ないことをお勧めします。 なお、このことに関しての苦情等は一切受け付けません。 夕食後のくつろぎの時間、インターホンが鳴った。 こんな時間に誰だろう? そう思いながらクラピカはインターホンをとる。 聞こえてきたのはやけに明るい声。 「クラピカー!遊びに来たわよー!」 「ゆきよちゃん…。」 クラピカは夜の訪問者を不思議に思いつつ戸を開けた。 「ゆきよちゃん…と鹿美ちゃん?」 小さな女の子―ゆきよちゃんの隣に並ぶ一匹の鹿―鹿美ちゃん。 鹿美ちゃんはゆきよちゃんの大の仲良しである。 リビングへ向かいながらクラピカとゆきよちゃんは話した。 「そういえば、ひろきおにいさんはどうしたんだ?」 人形であるゆきよちゃん。 そのパートナーである存在―ひろきおにいさんがいない。 クラピカはそのことを一番疑問に思っていた。 「ひろきおにいさんはねー、カミカミを直すんだって練習して、 思いっきり舌をかんじゃったの。」 あっけらかんとした声。 「そんでね、僕はもうダメだ…って言うから、クラピカんとこ来たの。」 「そうか…。」 ゆきよちゃんの性格からして、放っていったんだろうな。 そう思うと、かなり悲しい想像が頭をよぎった。 「お大事に…とひろきおにいさんに伝えておいて…。」 「あい。」 ゆきよちゃんがソファに座ってから、クラピカは飲み物を用意しに行った。 といっても、ゆきよちゃんは人形だから、用意するのは鹿美ちゃんの分のみ。 飲み物を入れて戻ると、クラピカは驚いた。 鹿美ちゃんが少し興奮気味にリビングをうろうろしている。 「鹿美ちゃん…?」 クラピカは飲み物を机の上に置きながら声をかけた。 「鹿美ちゃん、ひろきおにいさんのテントと違うから気になるんだって!」 「(テント住まいなのか!?)いや…まぁ、良いんだが。」 とりあえずクラピカは飲み物をすすめることにした。 「鹿美ちゃんに飲み物を入れたのだが、飲んでもらえないか?」 用意したのは温度調整をしたミルク(お皿に入れて)。 「べぇーべべべっ!」 鹿美ちゃんはミルクの皿を少しかいだ後そう言った。 そして、ぺちゃぺちゃと皿のミルクをなめ始めた。 「ありがとう、だって。」 大体のミルクが減ると、鹿美ちゃんはうれしそうにゆきよちゃんに耳打ちした。 「べべべ、べべぇーべべ、べぇーべぇーべべぇーべぇべっ。」 耳打ちしている割に鹿美ちゃんの声は聞こえていたが、 あいにく、クラピカに鹿語はわからなかった。 「よかったね。」 鹿美ちゃんは続けて話した。 「べぇーべべぇー、べべべべぇーべぇー!」 「えっ、そうなの?鹿美ちゃんったらー!」 歓喜の声をあげるゆきよちゃん。 「何の話なんだ?」 あまりにも盛り上がっていたため、話の内容を尋ねたクラピカ。 しかし、残念ながら今の時点でクラピカが解を見出すことは出来なかった。 「ひ・み・つv」 「さぁーてと。クラピカ、お風呂沸いてる?」 「あぁ、沸いてはいるが…。」 「じゃ、入ってくるね!」 そう言うとゆきよちゃんはぴょんとソファから飛び降りた。 「ゆきよちゃん、風呂に入って大丈夫なのか!?」 「主に木だから大丈夫!ぷかぷか浮かぶよ。」 (きのことか生えたらどうするのだ!?) クラピカがそんなことを考えているうちに、 ゆきよちゃんは足早にリビングから姿を消した。 クラピカは一つ息をつき、視線をソファに戻す。 そのときもう一つの存在が目に入った。 「鹿美ちゃんは一緒に入らないのか?」 「べぇー。」 やはりクラピカに鹿語はわからない。 すると、風呂場の方向からゆきよちゃんの声が聞こえてきた。 「クラピカー、鹿美ちゃんよろしくねー!」 「あぁ。」 クラピカはゆきよちゃんの言葉を得ると、ソファに腰を下ろした。 クラピカは思った。 さて…鹿美ちゃんをよろしくねと言われたものの、 さすがに鹿語はマスターしていない。 言葉でのコミュニケーションが出来ないとなると、ここはやはり…。 視線を変えると、鹿美ちゃんがこちらを見つめているのに気が付いた。 そっと近くに寄ってみる。 「鹿美ちゃん…なでても良いかな?」 「べーぇ。」 身体を寄せたということは肯定の返事だろうか。 クラピカは鹿美ちゃんの背を優しくなでてみた。 肌触りが良く心が癒える。 「鹿美ちゃんは毛並みが良いな。」 「べぇーえ。」 「気ん持ち良いー。」 浴槽のお湯に浮かぶゆきよちゃん。 熱すぎずぬるすぎず設定された温度が心地よい。 「それにしても鹿美ちゃんがねぇ…。」 真っ白な天井を見ながらゆきよちゃんがつぶやく。 「シカオ君は紫さんとラブラブだし、私もがんばらなきゃ!」 ここでふと思い浮かぶ一人の少年。 「醤君!かっこいいんだけどな…。」 ほんのりピンクに染まったゆきよちゃんのほほ。 しばらくなでていると、鹿美ちゃんはクラピカに身をすり寄せてきた。 動物に好かれるのは好ましいことだ。 クラピカはひそかにこの状態を喜んでいたが、 少しすると、鹿美ちゃんがやけに顔を押し付けてくるので困った。 「鹿美ちゃん…?」 それも身体ごとクラピカにのしかかってくる。 「鹿美ちゃん!?ぉもっ…!」 クラピカは驚くも、元来持つ優しさのせいで、 無理に鹿美ちゃんの身体を跳ね除けることはできなかった。 そのまま二人…じゃなく、一人と一匹はソファの上に倒れこんだ。 「ぅわあああぁーーー!!」 「湯上りほっこほっこ、ゆきよちゃーん♪」 歌いながらリビングに戻ってきたゆきよちゃん。 ゆきよちゃんは二人の様子を見て驚いた。 「もうキスまで済ませたの!?」 ソファの上でクラピカを下にする鹿美ちゃん。 べろんとクラピカの顔をなめている。 「きゃー!鹿美ちゃんやっるー!!」 「べぇえ♪」 笑顔で照れる鹿美ちゃんに、はしゃぐゆきよちゃん。 そんな鹿美ちゃんの下で、クラピカは今にも放心しそうになっていた。 (わ…た…し…は…。) クラピカの顔が光に照らされててらてらと光る。 どうやら鹿美ちゃんはクラピカのことが好きらしい。 ♪おわり♪ |