ちょこっと本命



タントタンタンタンタン…♪

台所に軽快なリズムが鳴る。

そこにいるのは一人の乙女。

「よし刻むの終わり!次は湯せんっと。」

私は今手作りチョコレートを作っている。

何のためかって?そんなの乙女にきくもんじゃない。

来たる2月14日、聖バレンタインのために決まってるじゃない!

……コポコポコポコポ……

「あっ、沸騰したね。湯せん湯せんっ…よーしとけてきたー…」

そのとき、あきらかにとは違う声が聞こえてきた。

!いー香りだねー。何やってんの?」…この好奇心旺盛な声…ゴン!

「おっ!チョコレートじゃん!」…キルア…

「そういえば明日はバレンタインデーだな。」クラピカまで…しかもポイントしっかりついてくるし。

そう言って3人はの周りにわらわらと集まってきた。

「どっ…どうして!私はこのためにわざわざ夜中に、しかも絶まで使って台所に来たというのに!」

はあわてふためいていた。

「明かりがついているのが気になった。」

「それにいー香りがするからさ。」

「音もね。」

(しまったぁー!絶に気を払っていたのに初歩的なミスをーーー!!)

そんなことはおいといて。

「さて、本題に入ろう。」

少し間を置いてクラピカが言った。

(本題?)

にはなんのことだかわからなかった。

「そうだな。」 

「うん。」

さらに間を置いて、3人はひとつ深呼吸をして問うた。

『誰にチョコレートを渡すんだ!?』と。



みんな真剣な様子。

その証拠にクラピカの眼はどことなく赤いし、

キルアの目はキラーンってしているし、ゴンはにこにこと笑顔で威圧していた。

は怖いものを感じたので正直に答えた。

「みんな…」

『みんな!?』

 

3人の声が見事にハモった。

しばらく沈黙がおこったが、やがてキルアとクラピカが同時に声を出した。

『本命はオレ(私)だよな!?』

続いて『オレ…だよね?』とゴンは上目遣いで、しかも瞳をうるうるさせながら言った。 ある意味犯罪的だ。

そして、周りのその言葉に3人はカチンときたらしく

すぐさま3人で言い合いが始まった。

「オレだ!」 

「いや私だ。」

「オレだよ。」 

(あちゃー、それにしても何でこいつらケンカしてるのよ…)

はその理由になんとなくは気づいているのだが、あえてそのことに触れるつもりはなかった。

もし、問い詰められでもしたら嫌だ。

(特にキルアあたりなんかゾルディック家仕込みの口の割らせ方とか有りそうだし…。)

そんなことを考えながらはしばらく傍観していた。

そうしたら3人の口論はますますひどくなった。

はオレのものだ。」

は関わるまいとは思っていたが、その勝手な一言にはさすがにカチンときた。

は一つ息を吐いてから、そのケンカを止めようとした。

3人はすでに取っ組み合いの乱闘となっていた。

それでも は堂々とそちらへ向かった。

「やめんかーーー!!!」

その一言に3人はピタリと止まった。

しかしそのとき、突然大きな音が台所中に響きわたった。

ガッシャーーン!!

せまい台所で暴れまわったせいで、チョコレートの入ったなべが倒れてしまったようだ。

もちろん湯せん中だったためチョコレートは溶けた状態。

床や台所はチョコレートまみれでどろどろベタベタそている。

もともとは一番チョコの近くにいたせいか自身にもチョコがかなりかかっていた。

「…………………」 

は噴火直前の火山のように無言で怒っていた。

…(汗)」

「だ、大丈夫か…?」

「……。」

3人ともさすがにきまずそうな顔をしている。

はあまりのいらだちのせいで、チョコレートまみれにもかかわらずこの場を去ろうとした。

「待てよ!」

そのときキルアがの腕をつかんだ。

クラピカはもう片方の腕をつかみ、ゴンは服を引っ張っていた。

「な・あ・に?」

は一文字一文字を強調して、いかにも怒ってますということをアピールしている。

「すまなかった…でも」

「その…オレたちさ…」

のことが…ね?」

そのときまず行動を起こしたのは意外なことにクラピカだった。

クラピカはのほっぺに唇をおとした。

「/////!?」

続いてゴンはもう片方のほっぺに、そしてキルアは唇へ…………と思ったら

どごぉっ!!

そうは問屋がおろさなかったようだ。その瞬間、の拳がキルアにクリティカルヒットしていた。

「いっ…てぇー…」

の頬は3人の行動のせいで赤かった。

「甘い…」 

そう言うゴンとクラピカも、痛さで頬を押さえているキルアも真っ赤だった。

そして少しの沈黙のあと、はあまりの恥ずかしさのせいで、今度こそ本当にこの場を立ち去った。



しばらくしては誰もいないところでつぶやいた。

「みんなの気持ちはうれしいんだけど…さ…言えるわけないじゃない。…ね、?」

---一方---

目当ての娘もいなくなり残ったのはライバルたちと、見るも無残なチョコレートの残骸。

「これ…オレらが片付けるのか?」

「しょうがないよ…」

「にしても明日チョコレートはもらえるのか?」

などと3人は嘆き悲しんでいた。 -おしまい♪-





あとがき


何で甘々じゃないのさ!と思うかもしれませんが、まあチョコレートが甘かったということで…(おい)

キルアファンの皆様(て私もか)殴らせてしまいましてほんとごめんなさい。


ゴン&クラピカ「そういうわけでさま、こんな駄文を読んでくださってありがとうございます。」

キルア「ほんとありがとなっ!」



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