がんばれ初心運転者!〜高速道路編〜


ただ今、クラピカと電話中。

「あぁ、久々の休みなんだ…。」
「じゃあさ、私と付き合ってよ!」
「別に良いが…。」
クラピカはデートのお誘いかと思い、少し顔を赤らめた。
しかし、がもう一言言った直後、一瞬にしてその赤みが消えた。
「OK。じゃあ車の特訓付き合ってね!」
「……………は?」

少しの間、会話がとまった。

はついこの間に
自動車運転免許を取ったばかりの初心運転者だ。
言い変えれば、が車を運転するときには
必ず初心者マークをつけなければいけないのだ。

「この前、やっと免許が取れたんだ。」
「それはおめでとう…。」
「でもまだまだ下手だからね。数こなさなきゃ。」
「そうだな。」
「ということでよろしく。」
「あぁ…。」

通話を切った後、
クラピカが立ち尽くしていたことなんては知らない。

休日、クラピカの運転指導が始まった。
、免許を取ってから今までに運転したことあるのか?」
「ん〜、3回ほどあるんだけどね〜。なんでかキルアに怒鳴られた。」
「………。」
「あと、レオリオに『あっぶねぇ!』て言われた。」
「そうか…。」
クラピカは聞かない方がよかったかと少し後悔をした。

「ま、いいや。出発しよ!」
「あぁ…。」
あとは野となれ山となれ、だな。byクラピカ

いすとミラーを合わせ、シートベルトをする。
そしてブレーキペダルを踏みながら、キーを挿し、回す。
エンジン音がしっかりと鳴り続いたら、
シフトレバーをPからDに合わせ(オートマ車)、
ハンドブレーキをおろして発進。
乗る前に初心者マークをつけることを忘れずに。

(発進はまともだな…。)
ゆっくりとスピードを上げる車の中でクラピカはを見た。
は真剣な表情をしていた。
「そういえばどこに行くんだ。」
「あ。」
クラピカの言葉と共にの手元がぐらついた。
「ひっ。」
「手元を緩めずに!」
「うん、うん。あのね、クラピカの好きなところで良いよ。」
目線は前に向いたまま、つたない声でクラピカに伝えた。
「そうか…じゃあ新しくオープンした美術館でもいいか?」
「おっけー、案内してね。」
「あぁ。高速乗るぞ。」
クラピカがそう言った瞬間、の表情がひきつった。
それを察したクラピカ。
「高速が嫌なら近場にするが…。」
「大丈夫よ!…きっと。何でもやらなきゃダメだもんね。」
(志は立派なのだが、いまいち不安が募るな…。)

そんな心は別に車はどんどん
高速道路のIC(インターチェンジ)へ近づいていった。
「ここからが難なのよねー。」
「まだ入り口手前だぞ?」
「いや、入り口が…。」
クラピカがなぜ入り口で?と思ったが、
そこでの方を見ると、その理由があっさりとわかった。
発券機の横で手を伸ばしてはばたつくの姿。
クラピカは少しあきれてしまった。
「届かなかったか…。ドア開けて取れ。」
「ふぁい(またやっちゃった…)…。///」

「どうもね、2回に1回くらいやっちゃうんだよねー、ああいうの。」
はこの後の加速レーンも
進入のタイミングがわからずにクラピカにしかられた。
「左右の確認が足りないぞ。」
「首動かしすぎるとハンドルが危なくてさー。」
クラピカはため息を吐きつつ、前を見直した。
「あまり速く走らなくて良いからな…。」
はスピードメーターをこまめに見ていた。
どうやらスピード調節には気を配っているようだ。
しかし時にふらついていた。
「ふらつかないように。」
「はい。」

しばらくすると2人の乗る車は前にいたトラックに近づいてきてしまった。
「げ。どうしよう…。」
「車線変更だな。前後左右の確認はしっかりだぞ。」
の顔からは不安の色がありありと見えた。
前後左右を確認して、方向指示器を出す。
さらに確認をして、ゆるやかに車線変更…。
「あ。」
ふと車が急に右に動いた。
それに反射的にハンドルを逆に切り返したせいにより、
やや強めの重力が右にかかり、身体がそちらへ傾いた。
「ひゃあっ!」
どうやら少々ハンドルを切りすぎたようである。
スピードが速いほどハンドルを切るのが少なくなる。
初心者にとってはここがなかなか難しいのだ。
「お願いだからもっとゆるやかに行ってくれ!」
クラピカの心臓は激しく脈打っていた。
(すいていて良かった…。)
クラピカが何とか安堵したのは車が安定してから数秒後のこと。
「じゃ、左に戻るね。」
「あぁ。」

しばらくして、やっと目的のIC(インターチェンジ)についた。
高速道路を降りるときには特に目立つ問題はなかった。
料金所に人がいるというのはやはりありがたい。
(人がいれば少々寄せるのに失敗しても手が届くから。)
はしみじみそう思った。

「はぁー。」
もクラピカも高速を離れたことにより、
少しほっとしていた。
高速道路はスピードが速い分、
仮にでも事故を起こしたら危険性が高すぎる。
二人ともそのことを良く考えていたからだ。
本当、楽しいドライブにならない。

その後の一般道は幸いなことに行く道に狭路がなかったためか
ぶつかることなく、ゆっくりと進んでいけた。
(まだ注意したいところが多々あるのだが、
言い過ぎても傷つくかもしれないから、今度でいいか…。)

目的地が美術館というのは良かった。
精神疲労を癒すのにはちょうど良いからだ。
クラピカは美術品を見ながら、半ばボーっとしていた。
ふと回復の早かったがクラピカに話しかけた。
「クラピカ?」
「なんだ?」
「また、付き合ってね。クラピカ言うことが的確で勉強になるから!」
「あぁ…。」
そのときクラピカは遠い目をしていた。
生の笑顔はときめくなぁ…そんなことを感じる元気がなかった。

クラピカは思った。
こうなれば、とことん付き合ってやろうか。
せっかく頼られているのだし、
私自身、指導者らしくなっていたしな。
そういえば先ほどの会話でまた心拍数が上がってきた。
あいつの運転でどきどきしたせいなのだろうけれど。
ある意味守ってやりたい、そう感じてるのかもしれないな。

好意がなかったら、わざわざこの貴重な休みに
自動車運転の練習なんて付き合う気なんてない。
それは皆も同じか。
まさか、好きと思う余裕すらないなんて思わなかったけれど。


---END---


あとがき

ミスするポイントはどこかの実例を押し込み押し込み(苦笑)。
「私、初心運転者のときでもここまでひどくはなかった!」という苦情は受け付けません。
免許をお持ちでない方は…車の運転ってこんなに難しいの!?と思われないよう。

クラピカでリクエストはきていましたが、これはあえて普通にアップしました。
個人的な趣向ですからね。リクエストの方は今しばしお待ち願います。


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