左肩半分


確かに雲行きは悪いとは思った。
でも天気予報では次第に晴れてくるといっていたはずだ。
だから俺は大丈夫だろうと信じて傘を持たずに出かけた。
そうしたらこのザマだ。
「何で雨なんか降ってんだよ…。」
すぐそばで聞こえる雨音が、一人で嘆く俺のむなしさをいっそう募らせた。
「しかたねぇ…走るか。」
俺は少しだけ考えて、そう結論づけた。


「ふぅ…やっぱりか。」
降りしきる雨の中で私は1人、そうつぶやいた。
確かに天気予報では次第に晴れてくるといっていた。
しかし、その割にはあまりにも雲行きがよくなかった。
だから私は念のために傘を持って出かけた。
そうしたら今は大雨だ。
私は自分の行動が正しかったことについて軽い笑みを浮かべた。
「さっすが私。」


パシャパシャ。水溜りを蹴る音が聞こえる。
「冷てっ。」
俺は雨の冷たさと自分の無様な姿に不快感を募らせていた。
さっさと帰ろう、俺はそう思いながら人々の間をすばやくすり抜けていった。
そして横断歩道を渡ろうとした。
しかし1歩踏み出そうとしたその瞬間、信号は赤に変わってしまった。
「ゲッ!」
俺は突然の不運を呪いつつ、強制的に足を止めた。


「あれってもしかして…。」
私は水音をパシャパシャたてながら道を歩いていた。
とりあえず傘は差しているので、大体は濡れずにすんでいたが、
それでも足元に水がはねるのが少し不服だった。
ふと横断歩道の向こう側を見ると、よく見知った青年を発見した。
見たところ、この雨に傘も差さずに立ち尽くしている。
「レオリオだ。」
私は通り過ぎるはずの横断歩道で足を止めた。
少しして信号が赤から青に変わった。


ぃよっしゃあっ!
長く感じた赤信号が終わり、俺はすぐさま向こう側へと走り出した。
俺のあまりの勢いに、(たとえるとハンター第一次試験の俺ってとこだな。)
周りは少し引いていたがそんなことはどうでもよかった。
わずらわしかった横断歩道をやっと渡りきったのだ。
そんな安心感で歩く速度を緩めたとき
俺の目の前に、俺よりかなり背丈の低い、傘を差した奴が来た。


「レオリオ。」

「ん?じゃねぇか。…買い物でも行ってたのか?」

「ん、そんなとこ。」

そんな風に軽い会話を交わしたあと、
私は何も言わずにレオリオに傘を近づけた。
よかったら入る?という簡単な意思表示。

「いいのか?サンキュ。………でもな、それじゃ低すぎるぜ。」

「レオリオが高すぎるんだよ。」

「仕方ねーなぁ。なら俺が持ってやるよ。」

「ありがと。」


そして俺はの傘を持ち、さりげなく車道のある左側につけた。
それから2人で歩き出した。
俺ももお互いに歩く速さをあわせようとしているみたいで、
それが、かえってゆっくりと歩く原因へとなっていた。
…それにしてもこうして見ると女と2人でひとつの傘なんだよな。
なかなかいい感じなんじゃねえか?…落ち着けるしな。
俺はを見下ろしながら少し笑みを浮かべた。


「レオリオ、なんか変なこと考えてない?」

「…突然何だよ。」

「なんか笑ってるし。相合傘ーとか思ってたりして。」

「な、何でだよ。俺はただ傘に入れたのがうれしいだけだぜ?」

「そう?ならいいんだけど。」

そう言うとはごくやわらかく微笑んだ。
俺はその笑顔を横目に見つつ、なんか腑に落ちないなと思った。

1つの傘の中、私の横で歩くレオリオ。
至って普通に歩いているように見えるけれど、私は気づいていた。
さりげなく車道側にいること、そしてまだ濡れ続けていること。
そんなあなたの優しさに。
紳士的だね、とも思ったけれど言わないでいようかな。
そんなことを考えながら私は再びクスリと笑った。

その優しさが良いんだからもう少し濡れてなよ♪
…あなたのその左肩半分。




あとがき

ある雨の日、まだ眠い頭の中で考えた物です。
雨といえば、2人で相合傘なんてよくあるなと思って
ずぶぬれに文句を言いつつ走っていそうなレオリオを選びました。


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