再会inアイアイ


私の名は。新米だけれどもれっきとしたハンターである。
現在、グリードアイランドで冒険中。個人で行動をしている。
ちなみに個人行動の理由は、つるむのが嫌いというわけではなく、
ただ単に一人のほうが気楽だから。
それにハンター試験で会った人たちを思い出すと他がかすむ。
ここで会ったどんな人よりもあの人たちのほうが断然面白かった。

今でもふと思う。あの時はとても楽しかったな…と。
走りながらでも思い浮かぶ。

…って、今は思い出に浸っているときでもないか。
私は今、ここで知った「面白そうなところ」に向かっている最中。
ここはゲームの中だけあって、面白い出来事が多いのだけれども、
その中でもこの場所の話を聞いたときには、ものすごく心がおどった。
だから、他の事は振り払って、私はその「面白そうなところ」を楽しむつもりだ。

森を抜け、やがて街が見えた。
ハート型のオブジェを持つ、個性的な風ぼうの街。

―恋愛都市アイアイ―

その名のとおり恋愛が体験できる街らしい。
それも一昔前の少女漫画のようなベタな恋愛を。
ぶつかったときが運命の出会いとか、
悪漢に絡まれたところに、白馬に乗った王子様が現るとか…。
…楽しそうでしょう?

「へぇ、ここがアイアイ…。」
ハートがかわいいというのが私の第一印象。
少しの間、街を見回しながら歩いてみる。
やはりかわいい外観だとひとしきり思ったところで、
私はとりあえず「ぶつかったときが運命の出会い」を
実践してみようと走ってみた。

えーと、あの角を曲がってみようかな。
上手くいきますように!

「うわ!」
「きゃっ!」

よし、見事に男の子とぶつかることが出来た。
悲鳴は女の子らしくが鉄則ね。
…ん?この人…。
私の目の前で目を瞬かせている銀髪猫目の少年。
ハンター試験で出会った人の一人、キルア。
ビジュアルはなかなか、生意気だけれども結構良い奴だった。
まさか、キルアにそっくりなキャラクターがいるなんて。
私は感動にも近い喜びを感じた。

しかし、それが私の勘違いだと分かるのはすぐだった。
…?」
その少年が、確認するように私の名前を言ったからだ。
「…キルア?…本物?」
「何だよ、本物って。」
うーん、この微妙にいぶかしげな様はまさにキルア。
「アハハ、こっちの話。」
まさかゲームの中で本物に出会うとは。

、久々だな。」
「うん。ヨークシン以来だっけ。」
ハンター試験で出会った人たちの中でも、
特に打ち解けたのがキルアを含む4人。
ヨークシンで共に行動したときには、A級盗賊首幻影旅団と関わったりと
ずいぶん貴重な体験をしたのを思い出す。
「それはそうと、なんでここにいるんだ?」
キルアの疑問は最もだと思う。
あれから私はクラピカやレオリオと同じように
ゴンやキルアとは別れたのだから。
「面白そうな仕事だと思って。募集してたからつい。」
(「つい」で出来るものか?…まぁ、こいつも成長してるのかな。)
「キルアはゴンと一緒だよね?」
GIにいる目的がゴンの父親を探すためだということは知っている。
「あぁ、近くにいるぜ。」
キルアは当たり前だという風にニッと笑みを作った。

「にしても本物か…。」
これは私がうっかりもらした一言だったが、
キルアはそれにもきちんと反応してくれた。
「だからその本物って何だよ。」
仕方がないので正直に答えた。
「恋愛したいなと思ってここに来てみたんだけれど本物じゃあ…。」
「あ?俺じゃ不満かよ。」
なぜか少しカチンときた様子のキルア。
「ううん。」
その私のあっさりとした返答に、キルアの目が一瞬見開かれた。
キャラクターならプログラムされたとおりに動くだけだけれども
本物だとしたら相手に悪い…と思ったのがその理由なんだけど。
その後なぜか、キルアはわずかにほほを赤らめていた。
まあいいかと思ってもう少し言葉を追加してみる。
「せっかくキルア似のキャラクターに出会えて
うれしいなって思ったんだけどね。あぁもちろん…」

「本物に出会えたのはもっとうれしいな。」

もちろんとびっきりのスマイルつきで。
うそはついてない。

「なら、俺と…」
キルアがいよいよ本格的に顔を赤らめながら、何かを言おうとした。
しかしその言葉は、私の背後から突如降ってきた声に惜しくも断たれた。
「じゃあ、ボクと恋愛しないかい?」
その特徴的な声に背筋に嫌なものが駆け巡った。
『ヒソカ!?』
「やぁ、v久しぶりだね。」
「(いきなり背後に立つなよ)あぁ、うん、久しぶり。ヒソカもここにいたんだ。」
「うんv今はゴンたちの仲間なんだv」
「え。」
失礼だが、今の言葉は意外に思った。
しかし、キルアが言うには本当らしく、
目的のものを手に入れるために協力してもらっているとのことだ。

「ところで、さっきの言葉の返事は?」
「何?」
ヒソカが話を変えてきた。
「ボクと恋愛しないかい?って話v」
ヒソカがずいいと顔を近づける。
いくら迫力のある顔だからといって、ここでびびってはいけない。
返すなら、あくまでも底の見えないスマイルで。

「嫌v」

あ、ヒソカが笑顔のまま固まった。

「恋愛するなら、ヒソカよりはキルアの方が良いよ。」
そう付け足したらなぜかキルアまで固まった。
しかもまた顔が赤いような…。
そんな風に二人が固まっている間にゴンが現れて
私はゴン達との再会をしみじみと味わった。
ところで、ゴンやヒソカが現れる直前に
キルアが言いかけた一言は何だったのだろう。

「なら、俺と…」

次に会ったときにはっきり伝えてくれるとうれしいな。
ゴン達と別れた後、はひそかに微笑んだ。



---END---


あとがき

今回は純情キルア君とひょうひょうとしたヒロイン?
展開が中途半端な気がしますが、進まない話もありだと思います。
ラジオでのアイアイの企画より先に作ったものです。
続きがキリバンページにあります(57000)。



戻る    最初に戻る