確か彼女は私に会いに来たはずだ。 少し離れたところではしゃぐ●○を見て、クラピカはわずかに眉をひそめた。 「ウィーン、ガシャ。」 「あははっ!」 機械音の正体は私を模して作られたロボット=クラピカロボ。 クラピカロボ…それは「ハンター×ハンターR」と言うラジオ番組で いっとき放送されていたコーナー「レオクラジオ」にて誕生した レオリオお手製のロボットである(詳しくはCDをお求めください)。 「うわ、これ最っ高!」 「だろ?」 「チェーン、チェーーーン!!」 「クラピカー!」 笑いながらロボにしがみつく●○。 彼女はロボを私と勘違いしているのではなかろうか。 そうとすら思わせるこのさま。 私はこの馬鹿騒ぎを止めるべく、●○の背後に立つと、 彼女の上から手を素早く振り下ろした。 パァン! 「んぎゃ!」 猫を踏みつけたような声を上げ、地に伏す●○。 それを私は冷やかな目で見下ろした。 手にはハリセン。ダメージはないはずだ。 「んあぁ、あれ?クラピカが二人。」 スパン! もう一度、無言で手を振り下ろした。 お決まりのボケはやめてくれ。 「そうそう、こいつまた改造したんだぜ。」 やっと落ち着いた●○にレオリオがロボに手を置いて言う。 「何を?」 「おう。会話、コミュニケーション機能を強化したんだ。話しかけてみろよ。」 その言葉に●○は嬉々としてロボと向かい合う。 「クラピカ、こんにちは。」 「コンニチハ、ナノダヨ。」 「とその前に名前と個人情報を入れてくれ。簡単でいいから。」 「OK。私の名前は●○。性別は女。年齢は…」 一通り言い終わったところでロボと●○の会話は始まった。 …ふむ、レオリオにしてはなかなかやるじゃないか…。 ロボと●○が会話をする様子を見て、素直にそう思った。 しかも●○はこのロボをいたく気に入っている様子だ。 「いいねーこの子。持ち帰りたいよ。」 「ッハハ。」 「クラピカー、好きだよー。」 冗談めかして●○はロボに抱きつく。 「あ…。」 レオリオが不審な顔をしていた。 「どうした?」 「いや、俺様な、すばらしい機能をつけたんだ。」 少し気まずそうに視線をそらすレオリオ。 だが、ぽつりぽつりと話は続けた。 「(異性からの)好意には愛情を持って返すと言う…」 「何だそれは。」 レオリオはそれ以上は答えずにただ視線だけ変えた。 その視線の先には●○とロボ―― ん? なぜ●○はロボに抱きしめられている? それもロボの片手は腰、もう一方は●○のあごにかかっており… って待て!? 流れる動作を前に、私ははっとした。 「こらーーーーー!!」 なぜ奴は●○に口付けしてる!? 口付けの後、●○はしばし惚けていたが特にショックを受けた様子はなかった。 ただ、きょとんとしているだけだ。 そんな●○を奴はうっとりとした表情で見つめている。 正直自分の見たことのない顔を見ているようで気味が悪い。 そしてその直後、奴は●○を抱き上げた。 「サァ、教会ヘ行コウ。」 何言ってるんだ!?こいつは! 「いや、あの…。」 ほら、さすがに●○も引いているではないか。 だが、ロボの言動はとまらない。 「何ダ?先ニ籍ヲ入レタイノカ?」 無理だろ、それは。 その返事に●○は一歩距離をとり、ロボと向き直った。 頭を下げる●○。 「お友達でいましょう。」 ふった!? はじめはふざけていたから、また似たような対応をするかと思ったが。 ロボに対し、まじめに対応する●○に少し惹かれた。 ●○が奴をふったことに喜びを感じてしまった。 ―そして、私は理解した―― 「ワカッタ。友達カラ恋人、ソシテ結婚トイウコースダナ。」 訂正: だからこれ以上ロボが●○に迫るのならば、 私は奴を壊してでも●○を奪いに行くぞ…? +--おわり--+ |