私の恋人は物知りだ。 だって私が尋ねて答えられなかったことなんてないんだから。 この前だってそう。 「ねぇねぇクラピカ。」 なんとなく尋ねてみたら、望んでいた以上の、 それもはるかに量の多い答えが返ってきた。 「ただ闇雲にとるだけでなく、吸収率も考えねばならん。そもそも…」 「もういい。」 そんなに一気に入らないよ、私の頭じゃ。 …っていうかこの人完璧すぎる。 容姿端麗、頭脳明晰、冷静沈着、そのうえ運動神経も抜群。 下から見上げるととても輝いて見える。 まるで弱点なんかないんじゃないかと思うくらい。 弱点…あぁ、次はそれを聞いてみようか。 「弱点?」 脈絡なく言ったせいか、クラピカの眉がわずかに動いた。 「唐突だな。」 だが、クラピカの顔はまたすぐにいつも見るものになっていた。 「答えたくないならいいんだけど。」 「いや…そうだな。」 しばし考えるしぐさをしたあとクラピカは笑んだ。 なぜかうれしそうにこちらを見つめる。 「強いて言うならだな。」 恋人同士の甘い会話とたとえるならそれでいいとは思うけれど。 けれど私は純粋な疑問を尋ねたつもりで。 そう思うと、ほんのちょっぴりムカッとした。 「何それ。足手まといってこと?」 クラピカは苦笑して少し首をかしげた。 「そういう意味ではないんだがな…。」 きっと、もっと良い意味なのだろう。私にとっては。 けれどそれは言葉で言うと、陳腐になるから。 クラピカはそれを知っていて、黙って私を抱きしめたのだ。 だから私より大きな手で私の頭をなでるのだ。 あぁ、あなたはやっぱり…。 弱みのない人間なんて本当にいるのだろうか。 もしいないとしたら、 私の目の前にいる人の奥深くは私には見えていない。 または彼はその弱みを見せたくなくって…その理由は。 考えていると胸が締め付けられる。 ………必死で強い者であろうとしている? 彼の道ははっきりとしている。 たとえ足元が崩れても、彼はその道を歩み続けるだろう。 だから彼は強く存在する。そう、私の目に映るのだ。 けれど私は、それと同じ道を歩いていけるのだろうか…? っ…! クラピカの唇が首筋に触れる。 一度チクリとしたそこはやがて熱を持つだろう。 クラピカは顔を上げずに口を動かした。 「、いつもありがとう。」 「…わけわかんない。」 その直後、クラピカは抱きしめる力をさらに強めた。 そして耳元でささやいた。 「お前は私の弱点であり…そして強さなのだよ。」 その先は何も言わない――けれど。 おぼろになる意識と共に疑問はうやむやになる。 身体の、そして心の奥までしびれていく――― やっぱりこの人は 私のすべてを支配することにおいて ――完璧な人―― ---END--- |